PERとPBRの違いとは?基本的な概要から効果的な覚え方などについて解説!
目次
近年の円安ドル高の影響などもあり、年齢問わず投資に興味を示すユーザーは増加傾向にあります。
中でも株取引は、スマートフォン経由で展開できるサービスなども様々登場し、手軽に投資を始められるとしてあらためて注目を集めています。
とはいえ、やみくもに株取引を行っても収益増加につながる訳ではなく、一歩間違えれば大きな損失につながる恐れもあります。
投資家が株価を適切に評価する上では、様々な指標をもとに今が割高なのか割安なのかを見極めています。
この判断に活用される指標として、代表的なものがPERとPBRです。
どちらも投資先企業の財務状況を確認する上で欠かせない指標となりますが、指標となる名称が似通っているため、初心者の中には混乱してしまうケースも少なくありません。
そこで今回は、PERとPBRの違いについて、基本的な概要から効果的な覚え方などについてポイントを中心に紹介していきます。
PER(株価収益率)とは?
まず、PERとPBRそれぞれの基本的な概要について紹介していきます。
PER(Price Earning Ratio)とは、企業の株価収益率のことを指します。
1株当たりの株式が、純利益の何倍になっているかを表す指標で、株式売買における判断材料の一つとなります。
このPERは、企業における年度の当期純利益に対し、発行済みの株式で割ることで算出できます。
この際、自己株式は発行済みの株式数からは除いて計算されます。
1事業年度の実績に比べ、現在の株価がどれくらい乖離しているか表すことができるため、投資における利益を客観的に判断することが可能になります。
このPERでは、一般的に数値が高いほど割高になり、低いほど割安といわれています。
期待値が低い企業の場合には、PERが高いタイミングで投資を進めるケースは少ない傾向にあります。
とはいえ、一概にPERだけで判断できるものでもありません。
例えば、PERが低かったとしても株式売買で利益が見込めない場合もあります。
そのため、PERが高いもしくは低い場合の要因まで深掘りした上で、売買の判断を行うことが重要です。
PERの計算方法
PERの計算方法は、先ほどふれたように企業における年度の当期純利益に対し、発行済みの株式で割ることで算出できます。
具体的な計算式の覚え方は以下となります。
PER(株価収益率)=株価÷1株あたりの純利益(当期純利益÷発行済の株式数)
例えば、株価が1,000円で当期純利益が5,000万円、発行済の株式数が200,000株の場合には以下となります。
5,000万円÷200,000株=250円
1,000円÷250円=4倍(PER値)
なお、PERは上記以外にも以下の計算方法でも算出することが可能です。
PER(株価収益率)=時価総額(株価×発行株式数)÷当期純利益
PERから把握できること
続いて、PERから把握できることについて紹介していきます。
PERは、1株当たりの純利益に対して株価が何倍で取引されているかを表します。
この際の当期純利益は、単に損益計算書に記載されている利益ではなく、予測数値を用いて算出されるケースが一般的です。
その上でPERをもとに利益を試算することで、投資額における回収までの予測が見極めやすい特長があります。
基本的にはPERが大きければ割高になり、小さいほど割安であることを踏まえ判断していくことで、効率よく投資につなげることが可能です。
基本的なPERの目安とは?
では、基本的にPERは何倍ぐらいが投資の目安となるのでしょうか。
PERの平均値は、対象企業の業種業態はもとより、プライム市場やスタンダード市場、グロース市場などによって異なりますが、一般的には15倍が目安といわれています。
そのため、株価が15倍未満のPERの場合には割安と見なされ、15倍以上の場合には割高と判断することができます。
とはいえ、15倍の基準はあくまで目安であり、中小企業の株式の場合には上場企業に比べて流動性が低いことからPERが15倍よりも低くなるケースが多くあります。
その他にも、例えば仮に対象企業のPERが10倍であっても、同業他社が5倍であれば割高ということができます。
このようなことから、PERは複数の企業と比較しながら判断していく必要があります。
PBR(株価純資産倍率)とは?
次に、PBRについて紹介していきます。
PBR(Price Book-value Ratio)とは、株価純資産倍率のことを指します。
企業の1株当たりの株式が、純資産の何倍で取引されているかを表し、その株価が割高なのか割安なのかを判断することができます。
この指標は、一般的に1倍以上であれば割高と判断され、1倍以下であれば割安として見極めることが可能です。
もちろん、PERと同様にPBRも対象企業の業種や市場の環境などによって異なりますが、一定の判断を行う上では効果的に活用することができます。
とはいえ、より精度を高めていくためにはPERなども活用しながら複合的に試算していくことが重要です。
PBRの計算方法
PBRの計算方法・覚え方は以下となります。
PBR(株価純資産倍率)=株価÷1株あたりの純資産(純資産÷発行済の株式数)
例えば株価が1,000円で純資産が5億円、発行済の株式数が200,000株の場合には、PBRは以下となります。
5億円÷200,000株=2,500円
1,000円÷2,500円=0.4倍(PBR値)
なお、PBRは上記以外にも以下の計算方法でも算出することが可能です。
PBR(株価純資産倍率)=時価総額(株価×発行株式数)÷純資産
PBRから把握できること
PBRは、企業の純資産から算出される指標です。
現株式の時価が1株あたりの純資産の何倍に該当するのか把握することができるため、市場における評価や経営状況、今後の成長性などを見極めることが可能です。
一般的にPBRが高いほど割高と評価され、低いほど割安と判断することができます。
とはいえ、純資産は年度における業績や成長性などを反映しにくい側面もあるため、中長期的な試算であればまだしも、短期的な株価の評価においては判断しづらい傾向にもあります。
また、中小企業やベンチャー企業などは、そもそもの純資産が少ないため、PBRが高くなる傾向もあります。
この場合には、単にPBRが高いから割高とは言いづらいケースもあるため注意が必要です。
基本的なPBRの目安とは?
続いて、PBRの基本的な目安について紹介していきます。
PBRの目安は、先ほどもふれたように1倍が基準となります。
これは、仮に企業が解散したとしても1倍であれば株式を購入した金額と同等の分配金が得られることが要因とされています。
そのため、一般的にはPBRが1倍以上あれば割高、1倍を切ると割安といわれています。
とはいえ、純資産にもとづく企業規模や業種業態によっては一概ではないため注意が必要です。
その中でも、対象企業のPBRを見た際に、1倍以下の状態が数年にわたって続いているようであれば、何か問題がある可能性もあるため注視しつつもより深く検討していくと効果的です。
PERとPBRの違いとは?
ここまでPERとPBRの基本的な概要について紹介してきましたが、この2つはどちらも株式売買において重要な指標となります。
とはいえ似通ったワードでもあるため、それぞれの違いを押さえ、適切に覚えておくことが重要です。PERとPBRの違いは株価に対する関係性がポイントでもあります。
PERは株価と純利益における関係性を表しているのに対し、PBRは株価と純資産との関係を意味します。
一般的に純利益は企業の年度における実績に対して変動しやすい要素となりますが、純資産は年度での変動はそこまで多くありません。
そのため、短期的な評価の場合にはPERが有効で、中長期的にはPBRの方が効果的な指標ということもできます。
いずれも株価を客観的に見極める上では欠かせない指標となりますが、判断基準が異なるため、目的や用途に応じて適切に使い分けることが重要です。
PERとPBRを把握することの重要性
投資家として利益を出すためには、企業の株価だけをみてもその妥当性を判断することはできません。
株価の妥当性を測るためには、対象企業における現状の財務状況や成長性など様々な要素にもとづき検討していく必要がありますが、その中でもPERとPBRは株価における客観的な判断を導くことが可能です。
対象の株価が割高なのか割安なのかを適切に判断することができれば、売買後の収益においても大きな影響を及ぼします。
異なるアプローチによる客観的な指標をもとに判断することで、今後の予測も立てやすくなります。
そのため、PERとPBRの特性を正しく把握しておくことは、株式売買において必要不可欠な指標とも言えます。
PERとPBRを活用する際の注意点
次に、PERとPBRを活用する際の注意点について紹介していきます。
PERとPBRは対象となる株価が割高なのか割安なのかを判断する上で欠かせない指標となりますが、やみくもに活用しても効果にはつながりません。
以下の要素は活用の際に押さえておくと効果的です。
① PERを使う際の注意点
まず、PERを活用する際には当期純利益を細かく見る必要があります。
基本的に企業の当期純利益は、特別利益や損失など通常の事業以外での大きな収入・支出が影響する場合があります。
この増減によってPERの数値が大きく変動する場合には、その後の成長性などの予測がしづらくなる可能性もあります。
また、近年の新型コロナウィルスや、過去のリーマンショックなど社会や経済に大きな影響を及ぼす事象によって、PERが意味をなさなくなるケースも少なくありません。
例えば、2019年頃から2022年頃までは特に新型コロナウイルスによって店舗ビジネスは損失を受け、IT技術系は増収につながる傾向にあります。
そのため、この3年間におけるPERを特殊と見るか、更なる成長性があると捉えるかで異なってきます。
このように、過去数年のPERをもとに要因を深掘りしながら検証することが重要です。
②PBRを使う際の注意点
次に、PBRを活用する際には対象企業の特性などを意識することが求められます。
一般的に、PBRは業種業態によって異なります。
例えば、IT技術などの業種は成長性が期待しやすいためPBRが高くなる一方で、電気・ガス業や銀行業などはPBRが低くなる傾向にあります。
これは、総資産の利用年数による影響ともいえます。
基本的にIT技術系の企業よりも電気・ガス業の方が総資産の利用年数が長くなります。
また、銀行業は金利の変動などによって業績が左右されやすいため、PBRをそのまま鵜呑みにはしづらい傾向もあります。
このように、PBRは1倍を基準という指標はあるものの、その他の複合的な指標とあわせ評価しなければ、間違った結果になりかねないため注意が必要です。
③同じ業界の企業を比較することが効果的
PERやPBRは、株式売買における判断基準の目安にすぎません。
これらを効果的に比較検証するためには、同業他社と比較しながら評価することが重要です。
例えば、IT技術系と電気・ガス系の株価を比較しても意味がありません。
適性を把握するためには、業種業態はもちろん、企業規模など似通った対象にて比較する必要があります。
その結果、将来性や成長性などを含め本当に割高なのか割安なのかを見極めることが可能になります。
④他の指標も合わせて確認する
企業の財務状況や株価の適性を把握する際には、様々な指標が存在します。
PERやPBRはあくまで判断を導く指標の一つであるため、この2つさえ押さえておけばすべて事足りるというわけではありません。
例えば、PSRでは赤字企業の株価指標が分かり、ROEでは対象企業の経営効率の良さなどを把握することができます。
その他にもROAでは資産の活用状況などを把握することも可能です。
このような指標を目的に応じて使い分けることで、多角的に企業の収益状況を確認することができるため、より予測の精度を高める効果が期待できます。
そのため、PERやPBRにこだわりすぎるのではなく、状況に応じて適切な分析・検証につなげることが重要です。
PERとPBRの効果的な覚え方
続いて、PERとPBRの効果的な覚え方について紹介していきます。
PERとPBRは、単語だけでなく意味や計算式も似通っているため、どちらが何を意味するのか混乱してしまうケースも少なくありません。
とはいえ、指標を間違って活用してしまうと適切な判断ができなくなってしまいます。
そこで、あらためてPERとPBRの違い・覚え方について、要素別に紹介していきます。
①意味的連想による覚え方
PERは、対象企業の株価が利益の何倍かを示す指標となります。
英語ではPrice(株価)とEarnings(利益)のRatio(比率)を表すため、ここからPERと覚えることができます。
これに対しPBRは、対象企業の株価が純資産の何倍かを示す指標となります。
純資産は簿価(帳簿上の価値)とも呼び、英語で表すとPrice(株価)とBook-value(簿価)のRatio(比率)となります。
この頭文字からPBRとなるため、「Earnings(利益)」と「Book-value(簿価)」の違いから意味的連想による覚え方で押さえておくと効果的です。
②計算式による覚え方
PERとPBRは計算式とあわせて押さえる覚え方も効果的です。
改めてそれぞれの計算式は以下となります。
PER=株価÷1株あたりの純利益
PBR=株価÷1株あたりの純資産
それぞれの指標を活用する際には、株価や財務状況などをもとに数値を算出する必要があります。
そのため、計算式とあわせ違いを把握することも有効です。
③共通点の認識や違いの明確化による覚え方
PERとPBRは、ともに対象となる株価を割ることで導き出すことができます。
そのため、株価を何で割って算出するのかという違いを明確化しておくことも重要です。
PERは純利益(Earnings)を、PBRは帳簿上の価値(Book-value)で割って算出します。
この目的を押さえておけば、効率よく違いを理解することが可能になります。
④両指標の組み合わせによる覚え方
その他、PERとPBRはそれぞれ独立した指標というよりは、組み合わせることで適性を把握する精度を高める傾向にあります。
そのため、それぞれの結果にもとづく効果を押さえておくことで、効率的に覚えることも可能です。
PERが高くPBRも高い:成長性などの期待値は高いがリスクも高い
PERが高くPBRは低い:収益性などに問題がある可能性が高い
PERが低くPBRが高い:資産効率などが良く効果が期待できる可能性が高い
PERが低くPBRも低い:割安な可能性が高い
PERやPBRとあわせて覚えておくべき指標
最後に、PERやPBRとあわせて覚えておくべき指標について紹介していきます。
注意点でもふれたように、PERやPBRはあくまで株価や財務状況における適正を把握する一要素にすぎません。
様々な指標をもとに多角的に評価することで、予測における精度をより高めることが期待できます。
その上で、代表的な指標について紹介していきます。
PSR
PSR(Price to Sales Ratio)は、企業の売上に対する時価総額を表す指標で、株価売上高倍率のことを指します。
計算式は以下となります。
PSR=時価総額(株価×発行株式数)÷年間売上高
このPSRでは、借入金が多い企業や赤字企業の株価なども把握することが可能です。
この把握はPERやPBRでは把握できず、中小企業やベンチャー企業など投資が先行するあまり経営が安定していない状況における株価の評価などにも活用することができます。
ROE
ROE(Return On Equity)は、自己資本に対する利益の割合を表す指標で、自己資本利益率のことを指します。
計算式は以下となります。
ROE=当期純利益÷自己資本(純資産)×100
このROEでは、対象企業が自己資本を活用してどれくらいの利益を生み出したのか把握することが可能です。
ROEが高ければ経営効率が良いことが分かるため、今後の成長性の予測などにも役立てることができます。
ROA
ROA(Return On Asset)は、企業の総資産に対する利益の割合を表す指標で、総資産利益率のことを指します。
計算式は以下となります。
ROA=当期純利益÷総資産×100
このROAでは、自己資本に負債を意味する他人資本を加えた試算によって、どれくらいの利益を生み出したのか把握することが可能です。
ROEと同じく、数値が高ければ経営効率が良いことが分かりますが、ROEよりも負債を含む分だけ精度が高くなるため、経営状況を把握する際にはROAを重視する傾向にもあります。
まとめ
PERとPBRは、どちらも株価の妥当性を把握する上で欠かせない指標となります。
客観的に株価を把握することができれば、より投資効果を高めることができるため、多くの投資家が企業の財務状況を把握する際に活用しています。
とはいえ、PERとPBRは単語や意味も似通っているため、どちらを活用すべきか混乱してしまうケースも少なくありません。
このような場合に、効率的な覚え方としては意味や計算式などとあわせ違いを明確化すると効果的です。
今回紹介した内容も参考に、それぞれの意味を押さえ、目的や用途に応じて適切に活用していきましょう。