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【IR担当者向け】株主優待の活用法&メリットデメリットを徹底解説

目次

株主優待は、企業が株主との関係を深めるために活用できる有効なツールです。
IR担当者にとって、優待の導入や改善は株主のロイヤルティ向上や企業価値の向上に直結します。
本記事では、株主優待の目的や種類、成功事例を交え、戦略的に優待を活用するためのポイントを詳しく解説します。

株主優待とは

株主優待とは、企業が自社の株主に対して提供する商品やサービス、割引券などの特典です。

特典には、商品やサービス、割引券、ポイントなどが含まれ、主に株主に長期間株を保有してもらうことが目的です。

株主優待は、現金を支払う配当と異なり、企業のサービスや商品を直接体験してもらうことで、企業への親近感や信頼感を高める狙いがあります。企業は株主優待を通じて、株主との関係を強化し、ブランドの認知向上や新規株主の獲得に繋げることが可能となります。

配当は企業の利益に基づくものですが、優待は企業の戦略や株主との関係強化を意識した施策です。

株主優待の種類

株主優待には、企業が株主に提供する特典がいくつかの種類に分かれています。主なものは以下の通りです。

  • 商品提供型
  • 割引券・優待券型
  • ポイントシステム型:株主にポイントを付与し、商品やサービスと交換できるシステム。
  • サービス利用券型:ホテルや航空会社などでの無料宿泊券や割引券を提供するタイプ。
  • 地域密着型:地方の企業が地元特産品や観光優待券を提供することで、地域経済を活性化させるものです。

ここではこれらの特徴やメリットについて詳しく説明します。

商品提供型優待

企業が自社の商品を株主に送るタイプです。食品や日用品が多く、株主が商品を体験できます。

例)カルビー株式会社

カルビーは、自社のスナック菓子詰め合わせを株主に提供しています。カルビーの人気商品である「ポテトチップス」や「じゃがりこ」など、株主が実際に手に取り楽しめる商品を送付します。この優待を通じて、株主はカルビーの新商品や定番商品を試すことができ、企業の商品への理解と愛着を深めることができます。

割引券・優待券型

割引券や優待券を提供する株主優待も、広く行われている形態で、自社店舗やサービスで使える割引券やクーポンを提供するタイプで、外食や小売業に多いです。

例)吉野家ホールディングス

吉野家ホールディングスは、株主に対して自社の店舗で使用できる優待券を提供しています。優待券は、吉野家の牛丼や定食などの食事に利用できるため、株主はお得に店舗での食事を楽しむことができます。株式の保有数に応じて優待券の枚数が増えるため、株主は長期的に株を保有するインセンティブを得られます。

ポイントシステム型

企業が株主にポイントを付与し、そのポイントを使って商品と交換できるシステムで、このポイントシステム型を導入する株主優待も近年増加しています。

株主に対して独自のポイントを付与することで、株主は、そのポイントを使ってオンラインストアなどでの商品購入や、サービスを利用が可能になるシステムです。

例:すかいらーくグループ

株主に対してすかいらーくの店舗で利用できる優待ポイントを提供しており、そのポイントを使って食事を楽しむことができます。

サービス利用権型

ホテルや航空会社などが、サービスの無料利用券や割引券を提供するタイプです。

たとえば、ホテル業界では無料宿泊券、航空業界では無料または割引の航空券、スポーツクラブやフィットネスクラブでは利用券が提供されることが一般的です。

この優待を通じて、株主は自社サービスを体験することができ、企業に対する親近感を強めます。

例)ANAホールディングス

ANAホールディングスは、株主に対して自社の航空便を利用できる株主優待割引券を提供しています。この優待券を使うと、国内線の航空運賃が約50%割引で利用できるため、株主には非常に魅力的な株主優待となっています。また、ANAの関連施設や旅行パッケージでも優待を受けられるため、株主がさまざまな形でサービスを体験できます。

地域密着型優待

地域に密着した株主優待も地域経済を活性化させると同時に、企業と地域社会のつながりを強化する手段として、近年注目されてきています。地方の企業が地域特産品や観光施設の優待券を提供し、地域の魅力を伝えるものです。

例)アサヒグループ

福井県に本社を置くアサヒグループ食品は、地元の特産品である梅干しを株主に提供して、地域のPRにも繋げています。

株主優待の目的

株主優待は、単なる株主へのサービスではなく、企業にとって戦略的なツールとして利用されています。ここでは、株主優待が持つ具体的な以下の目的について解説します。

  • 長期的な株主の維持
  • 株主のロイヤルティ向上
  • 企業ブランドの認知向上
  • 新規株主の獲得
  • 株主コミュニティの形成
  • 短期的な株価対策としての利用

これらの目的を意識して優待を設計することで、企業は株主との関係を強化し、企業価値の向上を図ることができます。

長期的な株主の維持

株主優待の最も大きな目的の一つは、長期的に株式を保有してもらうことです。企業が定期的に株主に対して優待を提供することで、株主は優待を受け取り続けるために株式を長期間保有する傾向があります。

これにより、企業は株価の安定化を図りやすくなり、短期的な利益目的の売買を減らすことができます。

株主のロイヤルティ向上

株主優待は、株主のロイヤルティを高めるための重要なツールでもあります。企業が定期的に自社商品やサービスを提供することで、株主は企業に対する親近感や信頼感を持ちやすくなります。

たとえば、食品や日用品を提供する企業が、自社の製品を優待として送ることで、株主がその製品を愛用する可能性が高まります。これにより、株主は企業のファンとなり、企業に対する支持を強化します。企業に対する支持が高まれば、株式の長期保有や追加投資にもつながるでしょう。

企業ブランドの認知向上

株主優待は、企業のブランド認知を広める手段としても有効です。特に、自社製品やサービスを株主に提供する優待の場合、株主がその商品やサービスを利用することで企業のブランドに触れる機会が増えます。

また、株主が受け取った優待を家族や友人と共有することで、企業ブランドの認知がさらに広がるでしょう。

新規株主の獲得

株主優待は、新規株主の獲得にも貢献します。株主優待を魅力的に設計することで、優待を目的に株式を購入する個人投資家が増加します。

また、株主優待は、他社との差別化を図る要素にもなり、新規投資家に対する強力なアピールポイントとなるでしょう。

株主コミュニティの形成

株主優待を通じて、企業は株主間のコミュニティを形成することも可能です。たとえば、優待イベントや株主総会での特典を用意することで、株主同士が企業についての意見交換をする場が生まれます。

こうした株主との良好な関係は、企業の長期的な成長や持続的な投資につながります。

短期的な株価対策としての利用

企業は株主優待を短期的な株価対策としても活用する場合があります。市場環境や企業の業績によって株価が下落する可能性がある際、株主優待の内容を強化することで、投資家の関心を集め、株価を下支えする効果が期待されます。

特に、消費者向けの企業であれば、優待を目当てに個人投資家が株を購入するため、一時的に株価を維持する手段として有効です。

株主優待の戦略的活用法

株主優待は、企業がただ株主に特典を提供するだけでなく、株主との関係を深め、企業の価値を高めるために使うことができる重要なツールです。ここでは、株主優待を戦略的に活用するためのポイントを、簡単に説明します。

株主に合わせた優待を選ぶ

企業が株主優待を導入する際、株主のニーズに合った優待を提供することが大切になってきます。

たとえば、高齢者が多い株主層であれば健康商品や旅行券が喜ばれ、若い世代が多いならデジタルコンテンツや体験型のサービスが人気といった具合です。

企業の商品やサービスを優待として提供することで、株主に自社の強みを理解してもらいやすくなります。

コストをコントロールする

株主優待を実施するにはそれなりのコストがかかってきます。しかしながら、その費用が企業にとって無理のない範囲であることが重要になります。

優待にかかるコストを管理しつつ、株主に満足してもらえる内容を考えることが求められ、また、優待内容の見直し、それによる株主の反応やコスト効果をチェックすることも大切です。

競合他社との差別化を図る

株主優待は、多くの企業が導入しているため、競合他社と差別化することが重要になります。

差別化を図るには、企業独自の特典やユニークなサービスを優待に取り入れると良いでしょう。他社では提供していない優待を考えることで、株主にとって魅力的な企業になることができます。

株主の声を聞く

株主優待を戦略的に活用するためには、株主のフィードバックを収集して反映させることも大切です。

たとえば、優待に対する株主の反応をアンケートや株主総会で確認し、その意見を元に優待の内容を改善していくといったプロセスを行うことで、株主の満足度を高めることが期待できます。

株主優待のメリットとデメリット

株主優待は、企業が株主に対して提供する特典で、企業にとっても株主にとっても多くのメリットがありますが、同時にデメリットも存在します。ここでは、株主優待のメリットとデメリットについて解説します。

株主優待のメリット

株主優待のメリットはまず、株主に長期保有を促す効果があります。特に、一定期間の保有が条件の場合、株主は株を手放さず、株価の安定に寄与します。

次に、企業ブランドの認知向上にもつながります。自社商品を優待として提供することで、株主にその価値を理解してもらう機会を作ることができます。

また、自社に対しての愛着心や信頼度を高める効果もあり、株主優待は新規株主の獲得にも有効で、優待目当ての個人投資家を引きつけ、株主数を増加させることができます。

株主優待のデメリット

株主優待のデメリットにはいくつかの要素があります。

まず、優待の実施にはコストがかかり、特に商品提供やサービス利用権を伴う場合は、製造・配送などの費用が企業の利益を圧迫する可能性があります。

企業のIR担当に求められる役割

企業のIR担当者は、株主とのコミュニケーションを円滑にし、企業の信頼を保つために重要な役割を担っています。特に、株主優待を導入している企業では、株主との関係を深め、長期的な信頼を築くために、以下の2つのポイントに注意を払う必要があります。

  • 株主とのコミュニケーション
  • フィードバックの収集と対応

株主とのコミュニケーション

株主優待は、企業の目的や戦略に基づいて設計されているため、その意図や狙いを株主に明確に伝えることが大切です。

IR担当者は、株主優待がどのように株主価値を高めるか、企業がどのような期待を持って優待を実施しているのかを丁寧に説明する必要があります。

フィードバックの収集と対応

株主優待に対する株主の満足度や意見を把握し、それを企業戦略に反映させることもIR担当者の重要な役割です。

フィードバックを収集し、それに基づいて改善を行うことで、株主の満足度を高め、長期的な関係を築くことができます。

実際の成功事例

以下に、株主優待を成功させた企業の事例を3つ紹介します。これらの企業は、株主優待を効果的に活用し、株主との関係を強化し、企業価値を向上させています。

オリエンタルランド株式会社

オリエンタルランドは、株主に対して東京ディズニーリゾートのパークチケットを優待として提供しています。ディズニーリゾートは非常に人気が高いため、株主にとっても魅力的な特典となり、株式を長期保有する理由となっています。さらに、パークチケットを提供することで、株主が実際にディズニーリゾートを訪れ、ブランド体験を強化する機会を提供している点も成功の要因です。

成果:

株主の長期保有を促進し、ディズニーファンが株式を購入・保有する動機づけに成功。

ブランド体験を株主優待として提供することで、株主との関係が強化され、株価の安定にもつながっています。

日本マクドナルドホールディングス株式会社

日本マクドナルドは、株主に自社店舗で利用できる優待券を提供しています。この優待券は、特定の商品を無料で引き換えられるもので、日常的にマクドナルドを利用する株主にとって非常に魅力的です。また、定期的に提供される優待券が、株主にとっての継続保有のインセンティブとなり、株式の短期的な売買を防ぐ効果もあります。

成果:

株主優待を通じて、株主が実際に店舗を訪れ、企業のサービスに対する理解を深めることができました。

株主のロイヤルティが向上し、長期保有株主が増加する結果となりました。

伊藤園株式会社

伊藤園は、株主に対して自社の飲料製品を提供する株主優待を行っています。特に、自社の健康志向の商品を優待として提供することで、健康を意識する株主層にアピールし、長期保有を促進しています。また、優待を受け取った株主は伊藤園の製品を実際に消費するため、商品の品質を実感しやすく、ブランド認知度の向上にもつながっています。

成果:

優待を通じて自社製品を体験してもらうことで、株主が企業のファンとなり、長期的な株式保有が促進され、その結果、株主の健康志向にマッチした優待となり、ターゲット株主層との関係が強化されることに繋がっています。

まとめ

株主優待は、ただの特典ではなく、企業の株主との関係を深め、企業価値を高めるための強力なツールです。

株主に合った優待を選び、コストを管理し、競合と差別化を図りながら、株主の声に耳を傾けることで、優待を効果的に活用することができます。このように、戦略的に優待を使えば、企業と株主の双方にメリットが生まれます。