海外IRとは?国内IRとの違いや実施ポイントなどを詳しく解説!
目次
近年、海外投資家による日本企業への投資が増えてきています。
グローバル化が進んでいる点もありますが、日本企業の成長に期待して日本企業株に投資する海外投資家も少なくありません。
海外投資家へとの関わりを深める方法の一つとして、「海外IR」が挙げられます。IRという言葉は、日本においてもよく聞かれるようになりましたが、「海外IR」となると何のことなのか分からない方も多いと思います。
そこで本記事では、海外IRについて、特徴や実施のポイント、海外IRの対象となる海外投資家の特徴などを解説していきます。
海外IRについて知りたい方は、ぜひ最後までご覧になってください。
海外IRとは
海外IRとは、企業が海外投資家とのミーティングや講演会などを設けて、事業状況や経営成績などを共有することです。
海外IRでは、企業のマネジメント層が直接海外へ出向いて、海外投資家と対話します。
また、近年ではビデオ通話アプリを活用して、海外IRをリモートで実施するケースも多いです。
ビデオ通話を利用する際は、時差が生じてしまう点がネックですが、海外へ直接出向いて海外投資家と対話するよりも、海外IR実施のハードルが下がってきています。
海外IRの特徴
海外IRの特徴として、「海外投資家と直接コミュニケーションを取る」点が挙げられます。IRは投資家に向けた情報発信になりますが、海外IRに関しては海外投資家が相手です。
海外投資家に伝えるべき情報の精査や、英語を使ったコミュニケーション・資料作成など、国内投資家向けのIRとは異なった準備が必要です。
海外IRを上手く実施できれば、海外投資家に対して自社の経営実績や強み、将来性などをダイレクトに伝えられます。
取引金額が大きい海外投資家が自社の株式へ積極的に投資してくれれば、株価の向上、企業価値の向上につなげられるでしょう。
翻訳の重要性
海外IRを行う際は、「翻訳」が重要になってきます。企業のマネジメント層が英語を使えたとしても、情報の正確さや適切な英語表現・単語を使用するという面で、英語のプロである翻訳者に依頼した方が無難です。
近年は、海外IRの広がりもあり、海外IRをはじめとしたビジネス領域に特化した翻訳者も少なくありません。
また、海外事業の展開などですでに翻訳者を雇っている、または翻訳会社との関わりがある場合は、海外IR時の翻訳を担当してもらえるか確認するのもよいでしょう。
すでに自社と関わりのある翻訳者であれば、自社の事業内容や強み、将来性などをある程度理解しているはずなので、海外IR時の翻訳もスムーズに対応できる可能性が高いです。
海外投資家の特徴
海外投資家の特徴として、以下の点が挙げられます。
- 日本株市場の約3割が海外投資家
- IR情報を重視
- キャピタルゲインを狙う傾向あり
- ROEも重視
それぞれ詳しく確認していきましょう。
日本株市場の約3割が海外投資家
日本の株式市場において、約3割が海外投資家で占められています。
3割と聞いてあまり多くない印象を持たれたかもしれませんが、実はこの3割の海外投資家が、日本の株式市場の株式売買代金の約6~7割を占めています。海外投資家一人あたりの売買代金が多い形です。
このため、株価の形成に大きな影響力を持っていると考えてよいでしょう。
企業経営において、海外投資家の株式売買は無視できない規模となってきています。
また、先物市場における取引では、海外投資家が7~8割を占めていると言われています。日経平均株価をはじめとした各種指標の推移は、海外投資家の売買動向に大きく左右されるといっても過言でないでしょう。
IR情報を重視
海外投資家は、企業のIR情報を重視しています。社長メッセージや株価、決算関連資料、アニュアルレポート、FAQなど各種IR情報を確認して、企業の状態・価値を見極める傾向が強いです。
また、企業の成長性や方向性のみではなく、同業他社と比較した際の各種経営指標の優位性など、定量的な情報にも着目しています。企業が取り組んでいる課題、掲げている戦略のポイントなどが、実際の経営指標として反映されているか、客観的に確認する傾向です。
加えて、海外投資家は社長や役員との直接のコミュニケーションを好むケースが多いです。ディスカッションの場が設けられ、海外投資家が企業の代表者と直接会話ができるかどうかも、海外投資家が投資先を選ぶ際のポイントになってきます。
キャピタルゲインを狙う傾向あり
海外投資家は、株式投資において「キャピタルゲイン」を狙う傾向にあります。キャピタルゲインとは、株価の差益を狙って株を売却した際に得られる利益です。海外投資家は、日本の投資家と比べて資金が潤沢であるケースが多いため、取引額も大きくなりやすいです。このため、海外投資家による売買は、マーケットにも大きな影響を与えてきます。
また海外投資家は、相場の流れに沿って売買をする傾向があります。いわゆる「順張り」と呼ばれる取引です。逆張りは避けて、あくまでも市場全体の流れを踏まえて売買を行う形です。潤沢な資金を持っている海外投資家が、順張りで取引を行うことで、マーケットの流れが形作られているといっても過言でないでしょう。
ROEも重視
海外投資家は、ROEも重視しています。ROEとは「Return on Equity」の略称で、日本語で「自己資本比率」と呼びます。ROEは、投資家が投下した資本に対して、企業がどれだけの利益を出しているかを表す財務指標です。企業がどれくらい効率よくお金を稼いでいるかを示している財務指標ともいえるでしょう。
海外投資家たちは、「ROEの高い会社が投資対象としてふさわしい」という見解を持っている傾向です。日本企業の中で、ROEが高い企業については、海外投資家から投資の対象となりやすいと考えてよいでしょう。
なお、海外投資家たちに自社への投資を促す方法として、「株主優待」の利用が挙げられます。株主優待とは、企業が株主に対して、商品やサービスなど金銭以外で還元する制度です。海外投資家にとって魅力的な株主優待を設定することで、海外投資家による自社への投資を増やせる可能性があります。
海外IRと国内IRの違い
海外IRでは、日本企業のマネジメント層が海外へ出張して、海外投資家に対して各種説明を行います。
一方、国内IRでは外国人投資家が日本へ足を運んで、企業と会う形です。
海外IRは、約1週間ほどのスケジュールで実施されるケースが多いです。海外IRが実施される場所は、ヨーロッパやイギリス、アジア、北米がメインになります。1週間の中で、ヨーロッパ内やアジア地域内を移動しながら、複数の都市を回って海外IRを実施します。
海外IRでは、マネジメント層の意向が海外投資家へ明確に伝わるよう、通訳を介して実施されることが多いです。
海外IRの効果
海外IRを実施するとで、以下に挙げる効果が期待されます。
- 海外投資家との対話による企業理解の深化
- 海外投資家のリスト作成
- 海外市場における値動きの把握
それぞれ詳しく確認していきましょう。
海外投資家との対話による企業理解の深化
海外IRを実施することで、海外投資家と対話することになります。対話の中で、お互いの企業への理解をより深いものにできます。特に、海外投資家が日本企業に抱いている考えや意見などは、日本の投資家のそれと比べると、なかなかリアルな情報を得ることが難しいです。海外IRによって、海外投資家から直接考えや意見を聞くことができれば、海外投資家が企業に対して何を思っているのか、把握しやすくなるでしょう。
海外投資家のリスト作成
海外IRを行うことで、海外投資家のリストを作成できます。海外IRで直接会った海外投資家の名前や資産額、投資額を記録していけば、どの海外投資家が自社の株価に大きな影響を持っているか把握可能です。
海外投資家の情報を取得してリスト化する際は、個人情報の取得について海外投資家から了承を得る必要があります。了承を得ずに、秘密裏に個人情報を取得して活用すると、海外投資家から非難を受ける可能性が高いので、必ず公にした状態でリストを作成してください。
海外市場における値動きの把握
海外IRを実施する際は、海外へ直接出向くことになります。このため、現地の株式市場における株価の値動きをリアルタイムに把握可能です。自社の株式が、海外市場においてどのような値動きをしているのか、海外投資家の声を聴きながら確認できます。
海外IRを実施するポイント
海外IRを実施するポイントとして、以下の点が挙げられます。
- 実施前提の確認
- 言語面の確認
- IR情報掲載サイトの確認
- 投資家との対話
それぞれ詳しく見ていきましょう。
実施前提の確認
まずは「なぜ海外IRを実施するのか」という前提を確認しましょう。たとえば、「自社株式の保有者割合が日本人投資家ばかりであるため、海外投資家にもっと買ってもらうために海外IRを行う」「自社株式を所有している海外投資家とコミュニケーションを深めて、中長期的に株式を保有、購入してもらう」など、海外IRの前提を確認することで、自社における海外IRの必要性を把握できます。
やみくもに海外IRを実施しても、海外出張費や講演費用などを無駄にしてしまいます。海外IR実施の前提を確認した上で、海外IRを実施していきましょう。
言語面の確認
海外IRを実施する際に、「英語」は必須です。世界共通言語である英語を使って、海外投資家とコミュニケーションを取ります。海外IRで講演する際に、マネジメント層が英語を流暢に話せれば問題ありませんが、ビジネスレベルの英語に達していない場合は、通訳を活用した方がよいでしょう。通訳を依頼すれば、通訳者が企業側の意向をくみ取って、適切な表現で海外投資家へ話してくれます。
海外IRにおける企業情報は細かく、専門用語も多くなってきます。間違った情報の発信を防ぐという面でも、通訳の活用はおすすめになります。
IR情報掲載サイトの確認
IR情報の掲載サイトの確認も必ず行いましょう。海外IRによって海外投資家へ直接説明に行く場合でも、IR情報の掲載サイトが充実していないと、海外投資家から不審な目で見られます。
日常における企業情報の収集では、海外投資家はIR情報のサイトを確認します。IR情報が詳細に掲載されていれば、海外IRにおける直接対話もより深いものにできるでしょう。
海外投資家向けの情報は、当然ながら「英語」で記載する必要があります。正しいIR情報を伝えられるよう、掲載内容の英文化にも細心の注意を払いましょう。
投資家との対話
海外IRでは、投資家と直接対話することになります。あらかじめ、海外投資家からどのようなことが聞かれるかまとめておき、回答を準備しておくのがおすすめです。ただ、定型的な回答のみならず、質問の内容に沿って回答する器用さも求められてきます。通訳を利用する場合は、通訳者と打ち合わせをして、回答の方針を事前に共有しておくのがおすすめです。
海外IRの依頼先について
海外IRを行う際、自社で行う以外の方法として、「証券会社」に依頼する方法が挙げられます。証券会社のアナリストやコンサルタントに、海外IRで使用する資料の作成や、海外投資家とのコミュニケーションを依頼する形です。
もちろん、証券会社が単独で海外IRを行うといった形ではなく、自社のマネジメント層も一緒に参加した上での依頼になります。
株式発行や上場などで、証券会社との関りが深い場合は、証券会社へ海外IRを依頼するのも一つの方法です。
まとめ
海外IRとは、企業が海外投資家に対して、自社の経営状態や財務状態、将来の展望などを伝えて、コミュニケーションを深めることです。企業のマネジメント層が海外へ出向いて、海外投資家と対話する形式が主流ですが、近年はビデオ通話アプリを活用して、オンラインで海外IRを実施するケースも増えてきました。
海外IRを行うことで、海外投資家と各種情報を共有できて、関係性を深めることが可能です。海外投資家からすると、企業のマネジメント層と直接コミュニケーションを取ることで、投資に対する積極性を高められます。
海外IRは、世界共通言語である「英語」を使って行われます。ミーティングでの発表はもちろんのこと、海外投資家向けの資料も英語で作成が必要です。英語に不安がある場合は、海外IRなどのビジネス領域を専門にした翻訳者に依頼しましょう。
また、海外投資家に自社へ投資してもらうポイントとして、「株主優待の充実」が挙げられます。株主優待によって、企業の商品を受け取ったり、各種サービスが割引価格、または無料で受けられるなど、金銭以外でのメリットを享受できます。
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