株主管理とは?企業運営における重要性と管理の方法をご紹介
目次
株主管理とは、企業が株主に関する情報を正確に把握し、適切に管理することを指します。
これは企業運営において非常に重要であり、株主との信頼関係の構築や経営の透明性を高めるために欠かせない要素です。
株主は会社の所有者であり、経営方針に影響を及ぼす存在であるため、株主管理を適切に行うことで、株主総会の円滑な運営や株主とのスムーズなコミュニケーションが可能になります。
さらに、適切な株主管理は、企業の持続的な成長に必要な基盤を築くためにも重要です。
本記事では、株主管理の重要性、主な業務、株主名簿の管理方法について解説し、株主管理に役立つ「デジタルギフト®」についても紹介しています。ぜひ最後までご一読ください。
株式会社の運営に必要な「株主管理」とは
株主管理とは、企業が株主の情報を整理し、株主との関係を良好に保つために行う業務のことです。
株主管理では、企業が株式を発行して資金を調達する際に、株主がどれだけの株式を保有しているかを正確に把握することが不可欠です。
この管理は企業活動において重要な役割を担い、慎重かつ正確な取り扱いが求められます。
企業は、株主から株主名簿の開示を求められた際に応じる義務があるだけでなく、株主の情報が不明になると、株主総会の出席通知を送れなくなり、それにより株主総会や会社の運営に支障が生じます。
そのため、企業は株主管理を慎重かつ効果的に行うことが重要です。
株主管理の主な業務について解説
株主情報を管理するために必要な基本的な業務は、以下のとおりです。
どのような業務か見ていきましょう。
株主名簿の管理
株主名簿とは、自社の株主に関する情報をまとめて管理するリストのことです。
株主名簿を作成する目的は、自社の株主が誰で、どれだけの株式を持っているかを正確に把握し、管理するためです。
すべての株式会社には、会社法上、株主名簿を作成し、保管することが求められています。
なお、会社の設立時に提出する「法人設立届出書」には、添付書類があります。以前は、6種類もの添付書類を用意する必要がありました。
しかし、2019年の税制改正後は、株主名簿や貸借対照表などの提出が不要になりました。
また、株主総会の案内は、株主名簿に記載された住所に送られるため、株主名簿は常に最新の状態にしておくことが必要です。
株主管理を怠り、株主の情報が不明になると、株主総会の案内が届かず、総会が開けなくなる可能性もあります。
株主名簿について、この後にも詳しく解説しますので、チェックしてください。
株主への情報提供
株主への情報提供とは、企業が株主に対して経営状況や重要な決定事項について定期的に情報を届ける活動です。具体的には以下のような内容が含まれます。
財務報告:決算短信や年次報告書など、企業の財務状況や業績についての詳細な報告を提供します。
業績や戦略の説明:企業の業績や今後のビジネス戦略について説明し、株主が会社の運営状況を理解できるようにします。
重要な決定事項の通知:企業の重要な決定事項(例えば、配当の変更、大規模な投資計画、経営陣の変更など)について情報を提供します。
これらの情報提供により、株主は企業の状況を把握し、自分の投資がどのように運営されているかを理解できるでしょう。透明性を保つことで、株主の信頼を得ることができ、企業と株主との良好な関係が築かれます。
株主総会の案内
株主総会は、株主に対して年次開催が義務付けられている会合です。会社法の規定に基づき、株主への適切な通知や準備を行います。
株主総会の招集通知は、株主に対して以下の情報を伝えるものです。
- 開催日時
- 開催場所
- 開催目的事項(必要に応じて)
株主総会の招集通知は、公開会社の場合は開催の2週間前に、非公開会社では1週間前に行われる必要があります。これは会社法に規定されており、期日を厳守することが必要です。
株主への利益配当
利益配当とは、企業が経営活動で得た利益を株主や社員に分配することです。会社法では「剰余金の配当」ともいいます。株主への利益配当は、株主管理の不可欠な要素です。株主総会で配当額が承認されると、1ヶ月以内に支払手続きが行われます。承認後は、税務署に「配当金や余剰金の分配に関する支払調書」を提出し、株主にも同じ調書を渡します。
この支払調書に記載する主な内容は、以下のとおりです。
この支払調書は、配当を行った際に必要な書類です。利益が出ている安定した会社が発行する書類と言えるかもしれません。
株主優待のお知らせ
株主優待とは、企業が株主に商品やサービスを感謝のしるしとしてプレゼントする制度です。
株主優待は企業が自由に決められる制度のため、実施については任意ですが、2024年5月29日時点で、約1,488社の上場企業がこの制度を導入しています。
最近では、デジタルギフトを株主に贈る企業も増えています。
デジタルギフトは、メールでURLを送るだけで完了するため、発送作業や印刷費、郵送費などのコスト削減ができることなどがメリットです。
株主名簿の重要性
ここでは、会社法に基づいて、株主名簿の重要性について解説します。
株主名簿は、株主や株式に関する情報を明確にするために作成される帳簿であり、すべての株式会社は、会社法に基づいて株主名簿を作成する義務があります(会社法第121条)。この名簿は、会社の業務をスムーズに行うための側面と、株主や利害関係者を保護するための側面を持っています。
まず、事務処理の便宜という点では、株主名簿に記載された住所に対して通知や催告を行うだけで、会社は株主に対する法的な義務を果たすことができます(会社法第126条第1項)。例えば、経営者が気づかないうちに株主に相続が発生したり、連絡が取れなくなったりしても、株主名簿に登録された住所に総会の通知を送ることで、株主総会を適法に開催できます。
また、株主名簿には株主を保護する役割もあります。会社はこの名簿を本店に備え置き、株主や債権者などが閲覧やコピーを請求できるようにしなければなりません(会社法第125条)。これにより、株主や利害関係者は、会社の支配権がどの株主にあるかなどの情報を把握できます。
さらに、株主名簿の不備や虚偽の記載がある場合、取締役や株主名簿管理人は罰則を受ける可能性があります(会社法第976条第7号)。また、株主に変動があった際には、名簿の更新が必要であり、この作業を怠ると罰則のリスクがあります。そのため、適切な名簿の作成と管理が重要となります。
罰則などのリスクを避けるためにも、株主名簿の作成と管理を適切に行い、その方法と注意点を再確認することが重要です。
株主名簿の記載事項
主な記載事項は、以下のとおりです。
株主名簿には決まった形式がないため、必要な情報が記載されていれば、独自のフォーマットで作成することができます。
以下、記載事項の注意点を2つ紹介します。
※株券番号
株券発行会社の場合、株券番号の記入が必要です。一方、株券を発行していない場合は、備考欄に「株券不発行」と記載しておけば問題ありません。
※株式に質権を設定している場合
質権とは、債権者が債務者に対して設定する担保物件です。債務が返済されない場合に、その担保を売却して得た金額で債務を返済します。株式に質権を設定している場合、質権者の名前と住所、質権が設定されている株式数の記入が必要です。
株主リストとの違い
株主名簿と株主リストは、それぞれ違う目的で作成される書類です。株主名簿は、企業が株主に関する情報を管理するためのもので、株主リストは法務局が株主情報を確認するために必要です。
株主リストは、役員の変更や会社名の変更などの登記申請をする際に必要で、商業登記の不正利用を防ぐために作成が義務付けられています。内容も異なり、株主リストには、株主名簿の情報に加えて、議決権の数やその割合も記載する必要があります。ただし、株主リストにはすべての株主を記載する必要はなく、上位10名、または議決権数上位2/3の株主だけで構いません。株主名簿が正確であれば、株主リストもスムーズに作成できますが、内容が違うため、そのまま使用することはできません。
株主名簿記載事項証明書との違い
株主名簿と株主名簿記載事項証明書は、それぞれ異なる目的で使われる書類です。株主名簿は、会社が株主の情報を整理して管理するための書類です。この名簿には、株主の名前や住所、所有している株式の数などが記載されています。株主総会の案内を送ったり、配当金を支払ったりする際に使われます。全ての株式会社は、この名簿を作成し、保管することが法律で決められています。
一方、株主名簿記載事項証明書は、株券を発行しない会社で株式を譲渡(売買など)する時に必要な書類です。この証明書には、株主名簿の内容に加え、代表取締役の署名と押印が含まれており、その株式の持ち主が正しいことを示します。
株主名簿の管理方法
株主名簿を管理する際に押さえておきたいポイントを3つ紹介します。
- 会社の本店で保管
- 記載内容に変更がある場合
- 株主名簿の閲覧または謄写請求
それぞれについて説明します。
会社の本店で保管
原則、株主名簿は会社の本店で保管します。これは会社法第125条で決められています。本店でなければならない理由としては、株主から名簿の閲覧またはコピーの依頼があったときに、理由が正当であればすぐに対応する必要があるからです。ただし、会社が株主名簿管理人を指定している場合、その管理人あるいは管理会社に名簿の管理を委託することも可能です。
株主名簿管理人とは
株主名簿管理人とは、株式会社に代わり、株主名簿の作成や保管、その他関連する事務作業を担当する人や会社のことです。株主名簿管理人になるための具体的な資格は規定されていません。小規模な会社では司法書士が、大規模な会社では信託銀行がそれぞれ管理を行います。株主名簿管理人は、特に株主の数が多く、日々変動がある上場会社で必要とされます。
株主が非常に多い場合、株主名簿の作成や保管だけでなく、更新作業が膨大になります。これらの作業を自社で行うと、時間や手間がかかり、コストも高くなることが問題です。そこで、会社はこれらの作業を外部に委託し、株主名簿管理人を設置することで、効率的に業務を運営することが可能になります。
株主名簿管理人選定のポイント
株主名簿管理人を選ぶときは、管理人の特徴をしっかり理解した上で決めることが大切です。
株主名簿管理人は、通常、株式上場後の株主数や株式事務の量に応じて手数料を請求するため、上場前は手数料が安く設定される傾向があります。つまり、上場前にかかるコストは、どの株主名簿管理人を選んでも大きな違いはありません。
しかし、株式上場後の手数料の額や体系、さらにサービス内容(例えば、株主名簿管理の質や、関連するIR・SR業務のサポートの充実度)は、管理人によって大きく異なります。選ぶ際には、これらの違いもよく比較して、自社に最も適した管理人を選ぶことが重要です。
記載内容に変更がある場合
株主名簿を作成するだけではなく、それを定期的に更新する必要があります。具体的には、株主の住所や氏名・名称が変更された場合や、株式の譲渡や相続によって株主が変わった場合に、名簿の情報を変更・更新します。
特に重要なのは、株式の譲渡です。株式が譲渡された場合、譲受人の氏名または名称、住所が株主名簿に正確に記入されていなければ、株式の譲渡が有効であっても、会社や他の第三者に対してその譲渡の効力を主張することができません。
また、株主や債権者からの開示依頼に迅速に対応するためには、情報を常に最新の状態に保つことが重要です。株主からの開示請求があった場合に、株主名簿の情報が更新されていないと、会社の信頼を損ねる可能性があります。そのため、情報の更新と管理を正確に行うことが必要です。
ただし、会社は株主の変更を積極的に調査して更新する義務はありません。変更があった場合には、株主自身が会社に名義書換の請求を行う必要があります。
株主名簿を作成・更新しなかった場合どうなる?
株主名簿は、会社法で義務付けられており、会社の規模や従業員数にかかわらず、すべての株式会社に株主名簿の作成が求められます。名簿の作成を怠ると、100万円以下の罰金が科されることがあり、同様に、名簿の更新を怠るとペナルティの対象になります。また、名簿に必要事項を記載しなかった場合や虚偽の記載をした場合も、取締役や株主名簿管理人が過料の制裁を受けるリスクがあります。そのため、株主の相続や株式の譲渡があった場合は、速やかに情報を更新することが必要です。
株主名簿の正確な作成と管理は、会社法に則って行うことが重要であり、その義務を怠った場合には厳しい制裁が課されることを認識しておくべきです。
株主名簿の閲覧または謄写請求
株主は、他の株主の情報を知りたい場合、会社の営業時間中であれば株主名簿を見たり、写しを請求したりすることができます。ただし、その際には理由を説明しなければなりません。親会社の社員も裁判所の許可があれば、同じように請求することができます。この権利は株主が一人で行使できるものですが、会社は法律で決められた特別な理由がある場合には、請求を拒むことができます。
閲覧・謄写請求の理由としては、株主としての権利を守るためや、株式の売買をしやすくするため、会社の運営を監視するためなどが考えられます。会社は、これらの請求に対応するため、本店に株主名簿を置いておく義務があります。
ただ、実際には株主が名簿を見たり写しを請求したりする必要があることは、それほど多くないとされています。
デジタルギフト®で株主管理ができる
「デジタルギフト®」は、会員登録不要で誰でも簡単に利用できるギフトサービスで、株主管理にも活用できます。QRコードを読み込むだけで、即時にギフトを受け取ることができ、従来の物理的な商品券や品物に代わる便利な選択肢として注目されています。
このサービスは、メッセージ動画やアンケート機能を使って、企業と株主の双方向のコミュニケーションを可能にします。
例えば、企業は0〜120秒の動画視聴時間を設定し、株主が動画を見た後にギフトを受け取るようにすることで、企業メッセージを効果的に伝えられます。
アンケート機能では、ラジオボタン、チェックボックス、自由記述の形式で株式保有の動機や株主の属性、企業への期待などの情報を収集し、株主の志向を把握することが可能です。
また、動画視聴を通じて株主に企業のビジョンやミッション、カルチャーを伝えることで、投資家との関係強化やブランディング効果の向上が期待できます。
これにより、企業と株主のコミュニケーションが活性化し、中長期的な経営戦略においても有効なツールとなるでしょう。「デジタルギフト®」は、株主優待の新しい形として、企業と株主の関係をより深める効果的な手段です。
まとめ
株主管理とは、企業が株主情報を正確に把握し、株主との良好な関係を維持するための業務のことです。
企業は株主名簿を作成し、保管することが法律で義務付けられており、名簿には株主の名前や住所、保有株式数などが記載されます。
株主情報が不明になると株主総会の招集通知を送れず、会社運営に支障が生じる可能性があります。
株主への情報提供も重要な業務の一つです。財務報告や重要な決定事項について定期的に株主に通知することで、透明性を保ち、株主の信頼を得ることができます。
また、株主総会の開催通知や利益配当の管理なども株主管理の一環であり、企業の運営において不可欠です。
さらに、株主管理には「デジタルギフト®」の活用も効果的です。
このサービスは株主とのコミュニケーションを強化し、株主の動機や期待を把握するためのアンケート機能や動画視聴を組み合わせたギフト提供です。
「デジタルギフト®」を通じて企業メッセージを効果的に伝え、投資家との関係を深めることで、中長期的な経営戦略にも貢献することが期待されています。