バーチャル株主総会とは?株主総会や株主優待はオンラインで行う時代に
目次
バーチャル株主総会は、インターネットを使用して行う株主総会です。
近年では、時代のニーズに合わせて株主総会をオンラインで行う企業が増えてきています。
バーチャル株主総会には多くのメリットがありますが、オンライン環境下で行うことによる問題点も指摘されています。
本記事では、バーチャル株主総会や株主優待の贈呈をオンラインで行うメリットについて解説します。
バーチャル株主総会とは
バーチャル株主総会とは、株主の一部もしくは全員が、オンライン環境で参加する株主総会のことです。これまで株主総会は、企業側が用意した会場に株主がリアルで集まって行われるものでしたが、近年ではバーチャル株主総会が増加傾向にあります。
バーチャル株主総会が行われるようになった背景には、新型コロナウイルスの感染予防対策があります。バーチャル株主総会は家にいながら株主総会に参加できる利便性の高さから、時代に合った開催方法として注目を集めています。
経済産業省のデータによると、バーチャル株主総会の実施状況は2020年6月の時点で122社でしたが、2021年の6月には323社にまで増加しています。
バーチャル株主総会の3つの形態
バーチャル株主総会には以下の3つの形態が存在します。
- ハイブリッド「参加型」バーチャル株主総会
- ハイブリッド「出席型」バーチャル株主総会
- バーチャルオンリー株主総会
バーチャル株主総会を開催する際は、これら3つの形態の中から自社の規模や条件に合ったものを選ぶ必要があります。それぞれの特徴は以下の通りです。
ハイブリッド「参加型」バーチャル株主総会とは
ハイブリッド「参加型」バーチャル株主総会とは、リアルで実際に開催されている株主総会に、インターネットを通じて参加できる株主総会のことです。株主は、実際に会場に足を運んで参加するか、インターネットの配信等で参加するかを選ぶことができます。
ハイブリッド「参加型」のバーチャル株主総会では、インターネットの参加者には議決権の行使や質問は認められていません。画面を通して審議の内容を確認、傍聴することができますが、決議や質疑応答はリアルの会場に参加した株主のみで行われることになります。
ハイブリッド「参加型」バーチャル株主総会は、株主総会の内容をインターネットで配信するだけなので、導入のハードルが低くなっています。しかし、インターネットの参加者には多くの制限がかけられるので、バーチャル株主総会のメリットは少なくなります。
ハイブリッド「出席型」バーチャル株主総会とは
ハイブリッド「出席型」バーチャル株主総会とは、「参加型」と同じようにインターネットで参加できる株主総会です。「参加型」との違いは、リアルの会場に参加している株主と同じように、議決権の行使や質問が認められているところです。
インターネットの参加者にも、リアルの参加者と同様の権限が与えられますが、株主総会の進行は「参加型」よりも複雑になります。通信障害により、進行に支障をきたすリスクも増えるので、企業側には「参加型」以上の万全な準備が求められることになります。
「出席型」は質問の形態が広がることにより、議論の幅が広がりますが、濫用的な質問が増加する可能性もあります。企業側は質問にスムーズに回答する対処シナリオを用意し、恣意的な質問の選別を行わないように注意する必要があります。
バーチャルオンリー株主総会とは
バーチャルオンリー株主総会とは、実際の会場を設けずに、株主全員がオンラインで参加する株主総会のことです。
法務省の定める「会社法」では、株主総会は物理的に⼊場することができる場所でなければならないとされており、これまでバーチャルオンリー株主総会の開催は難しいと考えられていました。
しかし、2021年6月に改正された産業競争⼒強化法によって、一定の条件を満たす企業はバーチャルオンリー株主総会の開催が認められることになりました。
バーチャルオンリー株主総会の開催の条件は以下の通りです。
- 上場企業であること
- 経済産業⼤⾂及び法務⼤⾂の「確認」を受けること
- バーチャルオンリー株主総会の開催を株主総会の定款で定めること
- 株主総会の招集決定時に、「省令要件」に該当していること
上記の開催要件を要約すると、バーチャルオンリー株主総会の開催を株主と国に認められた上場企業のみが、バーチャルオンリー株主総会の開催が可能ということになります。
バーチャルオンリー株主総会は開催例がまだ少なく、企業と株主のやり取りが完全なオンライン環境下で行われるので、トラブルの対処がより難しくなっています。反面、実際の会場を用意する必要がないことによるコストの削減や、感染症対策としての効果は高くなっています。
バーチャル株主総会のメリット
バーチャル株主総会は、オンライン環境下で行われることから、リアルでの株主総会にはない多くのメリットがあります。バーチャル株主総会のメリットをよく理解して環境を整備することで、企業と株主両方にとって有益な株主総会を開くことができます。
バーチャル株主総会のメリットは、具体的に以下のようなものがあります。
遠方の株主も気軽に参加できる
株主が多い大企業の多くが、東京に本社を置いています。そのため、株主総会も東京で開催されることが多く、従来のやり方では、遠方に住む株主が気軽に参加することが難しいのが問題でした。
バーチャル株主総会は、インターネットの使用環境さえあれば、会場に直接足を運ぶ必要がありません。ハイブリッド出席型バーチャル株主総会や、バーチャルオンリー株主総会は議決権の行使や質問も認められているので、通常の株主総会と同じように審議に参加できます。
株主総会を複数傍聴することが容易になる
株主総会は、決算月の3ヵ月後に開かれることが多くなっています。3月を決算月としている企業が多いので、結果的に株主総会は6月に開催されることが多いです。そのため、複数の企業で株主総会の開催日が重なることは珍しくありません。
株主総会の開催日が重なると、どちらか一方の株主総会にしか参加できないという事態も起こりえます。バーチャル株主総会は、家にいながら参加できるので、複数の株主総会を傍聴することが容易になります。
株主重視の姿勢をアピールできる
バーチャル株主総会は、株主にとって多くのメリットがあります。時代に合わせたやり方で株主総会を開催することは、株主重視の姿勢をアピールできるため、企業にとってもメリットがあります。
経済産業省のデータによると、バーチャルオンリー株主総会を実施した3社の株主のアンケート結果では、バーチャルオンリー株主総会を実施したことを「評価する」という回答が99%を占めています。
アンケート結果から、多くの株主がバーチャル株主総会の開催を評価していることが分かり、企業側は株主との良好な関係性を維持する上でも、バーチャル株主総会の開催はメリットがあります。
株主総会の透明性の向上
バーチャル株主総会の開催により株主総会に参加する株主が増え、事前に集めた企業への質問を公表することにより、株主総会の透明性の向上が期待できます。
欧州では、株主総会の電子化と同時に透明性を高める政策がとられており、公正で透明性の高い株主総会の開催は、企業にとって重要な意味を持ちます。株主総会の参加者が増加することは、監視の目が増える意味でも効果があります。
バーチャル株主総会の問題点
バーチャル株主総会は、開催されるようになってまだ日が浅いこともあり、慣れない作業による問題点もいくつか存在します。特にオンライン環境のトラブルによる問題が多いので、企業側は環境の整備を進めていく必要があるでしょう。
バーチャル株主総会の問題点は、具体的には以下のようなものがあります。
株主総会の進行が通信環境に大きく依存する
バーチャル株主総会はオンライン環境下で行われるので、インターネットの通信環境が安定していることが重要です。バーチャル株主総会で通信障害が起きれば、進行に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。
バーチャル株主総会は、チャットや動画配信サービスなどを用いて行われます。これらのサービスの利用時に通信障害が起きた時のために、通信障害に強いスタッフを配備し、バックアップ手段の確保をしておくことが重要です。
バックアップ手段には、別の回線や予備のモバイルルーターを用意しておくことなどが有効です。また、通信障害が起きた時の対処シナリオを、企業と株主の両方で事前に共有しておくことで、不測の事態に備えることができます。
円滑なコミュニケーションをとることが難しくなる
バーチャル株主総会では、リアルでの株主総会に比べ、円滑にコミュニケーションを取ることが難しくなります。通信が安定しなかったり、返答に時間がかかるなどして、進行がスムーズに行われないこともあるので注意が必要です。
バーチャル株主総会をスムーズに進行するには、事前に株主から質問を受け付けておき、当日に企業側から口頭で説明するなどの対処が効果的です。当日の説明に対する質疑の回答などは、後日企業のホームページで公表することで、株主とのやり取りをスムーズに行うことができます。
開催に係るコストと手間が増加する
バーチャル株主総会は、開催方法が確立されていないこともあり、開催にかかるコストや手間が当初の予想よりも多くなる可能性があります。
開催の手間を省くには、他の企業のバーチャル株主総会の進行を参考にし、シミュレーションを綿密に行うことが重要です。開催のコストに関しては、実際に会場を借りる必要がない分、むしろ削減できるという意見もあります。バーチャル株主総会の開催例はこれから増えていくと思われるため。効率よく行えるやり方を模索する必要があるでしょう。
なりすまし防止のための本人確認が重要
バーチャル株主総会は、実際に株主が会場に訪れないので、本人確認が難しくなります。議決権を持たない他人によるなりすましによって、混乱が起きる可能性があるので、本人確認は正確に行う必要があります。
本人確認を正確に行うには、事前に株主に送付する議決権行使書面に株主固有のID・パスワードを記載し、ID・パスワード無しではログインできない環境を作ることが効果的です。
本人確認のために画面に顔を移して参加してもらうという方法もあります。ただし、肖像権には配慮する必要があるので、他の株主に顔を見られることが問題ないことを事前に確認することでトラブルを避けることができます。
株主優待で株主との関係性を維持
株主総会は企業と株主の大切なコミュニケーションの場です。バーチャル株主総会の開催は、株主とのコミュニケーションを重視している姿勢を見せるのに効果的であり、企業はあらゆる方法で株主との良好な関係性を維持することが重要になります。
株主に対して優待品をプレゼントする株主優待も、株主との関係を良好に保つ方法の一つです。株主優待は株主にメリットがあるのはもちろん、企業側にも複数のメリットがあります。
企業は、株主優待で自社の商品やサービスを宣伝することで、株主様を自社のファンにすることができます。
また、株主優待が株主に喜ばれるものであれば、株主優待を狙って長期的に株を保有してくれる株主も増えますし、自社のイメージ向上にも繋がります。
株主優待は、株主に喜ばれるものを用意するのが重要です。
また、企業側は株主優待を用意するのにかかるコストの削減にも取り組む必要があります。
株主優待にデジタルギフトを導入するメリット
「デジタルギフト」とは、メール、SNS、アプリで送られる電子ギフトです。
もちろん、QR印刷をして、紙での配布も可能です。
デジタルギフトを株主優待に導入することで、株主に喜ばれる電子ギフトをプレゼントできるようになります。
デジタルギフトで送られるポイントは、「PayPay」や「Amazonギフト券」など、多くの方が必要と感じるマネーサービスや金券と交換できます。
株主に確実に喜ばれるギフトを株主優待として用意することで、株主との関係を良好に保つことができます。
デジタルギフトは、URLをメールで送るだけでプレゼントできるので、在庫管理の必要がありません。
優待品の郵送にかかる手間やコストも削減できるので、企業としても大きなメリットがあります。
まとめ
バーチャル株主総会は、インターネットを介して株主が家にいながら参加できる株主総会です。
時代のニーズに合わせた株主総会の開催は、企業の株主重視の姿勢を見せることができるので、株主との良好な関係を保つ意味でも効果があります。
株主と良好な関係を保つには、株主優待で株主に喜ばれる優待品を贈るのも効果的です。
デジタルギフトを株主優待に導入することで、ポイント交換により確実に株主に喜ばれるギフトをプレゼントできます。
バーチャル株主総会もデジタルギフトも、オンライン環境下で行われることにより、時代に合ったサービスを株主に提供することができます。
企業の多様性を示す意味でも、デジタルギフトの導入は効果が高いと言えるでしょう。